今井・三木・浅井・斎藤ほか

〔試験区における調査〕 三根地先に試験区を設定し、定期的な調査を行い、フクトコブシの生態及び生物相等の解明に努めた。
 フクトコブシの月別の殼長組成をみた。1972・1979年の2回標識放流を実施したが、殆んと試験区内で再捕された。放流後1年以上経過すると再捕率は10%以下となる。
 ℓt=76.2〔1-e-0.8074(t-0.047)
標識放流による成長式から寿命を推定すると平均6.2年と算出された。
 産卵期は、雌雄の判別率と生殖腺の熟度からみると9月下旬から始まり10月中が盛期となる。殻長と生殖腺の成熟の関係は25mm以下は未成熟であることが判った。卵容量(EV)は次式で表わされる。EV=0.02565SL3.10993 SL:殻長
肥満度は6~7月にかけて最大となり、10月に最低となる。
 石の大きさと住みつきの関係は、小石には小型、大石には大型個体が多い。帽集区を設け毎月採捕して、空にした結果、冬季に蝟集量が多く、夏~秋にかけて少なくなる。これは摂餌とウネリの影響と考えられる。
 年令査定のため各種の方法を試み、殻重量・殻重率が利用できることが判明した。
 漁獲後の資源の回復を知るため、試験区の推定資源量を算出し、以後の枠取量の変化を追った。漁獲後資源は1年後に回復がみられるが、前年発生群の量と年級群の年による減耗が資源回復に関係深い。
 人工礁をN型・灰皿型の2種作成し、天然石との比較を行ったが生息密度に大差はなかった。しかしこれらの礁は波・ウネリ等で移動、破損がはげしかった。
〔一般漁場における基礎調査〕 20m以浅の海底地形を3類型化し、漁場の形成される地形と生態を示した。フクトコブシの住みつき状態について住み場別に図示するとともに生態の特異例2例を記した。漁場別の生息密度について海底地形の分類と枠取量から対比するとともに年令構成についても検討した。
〔考察〕 フクコトブシの生態について、産卵期・受精・発生・ふ化・成長・摂餌行動・減耗・産卵行動・寿命の検討を行った。減耗については冬季のウネリが大きな自然減耗の原因になっている。又漁場の管理方法についても検討した。
〔青ヶ島磯根資源調査〕 金太ケ浦の海底地形・生物相を調査した。

研究要報133(1978.2)

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