原*・井上*・村井*・斎藤*・加藤*・高橋**・川名**・中村**
〔ニジマス病害研究*〕 1975年度に都内の養魚池にIHNが発生し、ニジマスに被害をもたらした。稚魚期に原虫寄生・せっそう病・水生菌による被害等がみられた。
 ニジマス稚魚のIPNの予防効果をK-1631を用いて検討した。経口投与したが、摂餌を妨げることもなく、生残率を高めることができた。
 IPN・IHNウィルス及びAeromonas salmonicidaに対する紫外線殺菌灯の効果を調べたが、A. salmonicidaは5分以上で生存はしなかったが、IPNは240分、IHNは30分間照射でも生存が確認された。紫外線で殺菌した飼育水で飼育したニジマス稚魚にもIPNは発生したが、生残率は対照区よりも高くなる傾向がみられた。
 ヤマメの親魚にせっそう病ワクチンを接種したが、明らかな効果は認められなかった。稚魚に対する経口ワクチン投与では対照区より投与区の方が発病が遅れる傾向がみられた。
 せっそう病の迅速診断法として蛍光抗体法(FA法)の検討を行った。培養法とよく一致することから現場での診断法として優れていることが判った。
〔温水性淡水魚の病害研究(穴あき病)**〕 1975年度に都内の養魚池に発生した穴あき病は水試のワキン等では1973年以降増加の一途にある。多摩川の魚類の皮膚潰瘍性疾病はほとんどの魚種にみられ、中でフナ類は若干多かった。皇居外濠では6種にみられ、ハクレンに多く出現した。
 1974年度に病魚患部より分離した菌の生化学的性状をみたが、5種類が検索できた。昨年に引続き病魚からの菌の分離を培地をかえて行い、復元実験を行った。患部からの菌はすべての培地で分離培養できた。血液・腎臓では検出されなかったものもある。復元実験では患部及び血液からの分離菌には毒性の強いものもあり、腎臓を含めてこれら三者の皮膚に潰瘍形成能のある株がみられた。
 病魚の血液性状は健康魚に比べ、ヘマトクリット・ヘモグロビン量・赤血球数共やや低下しており、ばらつきが大きい。
 予防効果については、ニフルプラジン薬浴では発病をおさえることが判った。抗生物質の筋肉注射による治療効果がみられた。しかし三種の薬剤・投薬量の多少では差がみられなかった。
 水温を変えて治療の効果を追求したところ水温の上昇で治療に向い、下降で悪化する。

研究要報121(1976.3)

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