佐々木・伊藤・倉田・三村・広瀬・塩屋・山峯・西村・斎藤

 本調査は1966年を初年度として3カ年にわたり実施した。第1年度は総合的環境条件、生態の一部(要報57)、第2・第3年度は「すみ場」と「食性」要因の究明に主点をおき(要報67)、さらに第3年度には種苗生産によって得た稚貝の放流により移動・逸散・成長などの調査をした。以上3年間の総まとめである。
 フクトコブシのすみ場要因のうち、海底を平面的にみて表面積0.1㎡大の石に集中分布する。平面分布と食性から競合動物はコシタカサザエ・アカウニ・バテイラ・ウラウズガイである。フクトコブシの移動距離は直線で約20mで、10m前後がもっとも多い。本試験区の収容量は400㎡に400~500個体と考えられた。
 人工採苗稚貝の水槽飼育結果1年間で平均殻長24.3mmになり、第1令の大きさである。放流したところ天然の方が成長がよい。天然産の第1令は平均28.5mmである。殻長40mmを越えるものは2~3年以上の高年令群である。
 肥満度は4月に最高で9・11月に最低となる。生殖線熟度係数は8月に高く順次減少し12月には0となる。冑内容物はテングサ・オバクサが主で、摂餌の選択係数とよく一致した。

研究要報96(1969.3)

69.pdf [3039KB pdfファイル]