Ⅰ こい養魚池水質調査について

末永・鈴木・増田・岡庭

 都水試水元分場養魚池の水質の連続調査を行い、養魚管理の基礎資料を得ることを目的とした。
 水質の日変化について平均水温は10~11時にあることが多く、各項目の最高時・最低時は次のとおりである。
 D.O・CO・PHの日変化は飼育魚の影響はなく、植物性プランクトンにより左右される。
 コイの鼻上げの多いのは水温20℃以上の場合(9.5%)が多く、D.O 0.8㏄/ℓ以下の場合多く起きる。鼻上げは、低水温期は連日16時のD.Oが減少する場合、高水温期はD.Oが極端に増加する場合に危険性が大きい。水変りは植物性プランクトンが水中炭酸不足により枯死したことが原因と考えられた。

研究要報11(1958.2)

 

Ⅱ 多摩川の水質汚濁について

古井戸・塩屋・梶沼

 1957年羽田州において貝類が多数へい死したが、多摩川の水質汚濁によるものと考え対策考究のため調査を行った。
 多摩川の丸子橋より下流6点における水質を主として調べた結果、Oは河口部に僅かに溶存するのみで、CODは各地点共9~40ppmと高い値を示し、沃素消費量も各点非常に多く、河口部の他は15ppm以上であった。何れも六郷橋付近が汚染源と考えられた。
 貝類の被害は1月頃から羽田州多摩川寄りからへい死が始まり糀谷地先に及んだ。被害面積3.960k㎡、被害量あさり3,620トン、はまぐり216トン、しおふき116トンと推定された。被害原因は多摩川の水質汚濁によるもので、諸廃水の堆積に加え異常渇水で有機質の分解により無酸素水が漁場に及んだものである。

研究要報11(1958.2)

 

Ⅲ 東京都内湾潮流調査

古井戸・伊藤

ノリ養殖の環境要因としての潮流の状況を知るため、漁場の沖と陸側の計25点の上潮・下潮時の調査を3回にわたって行った。
 西部漁場は10月・2月の調査では大正場・5号沖(北側)では下げ潮でも北・北西流・又は南西流があり複雑な流向を示し、3号・2号(中央部)では下げ潮でも西・北西流の上げ潮傾向を示している。
 東部漁場は10月の調査で導流沖のみ1m・3m層共に下げ潮に他地点と反対の北西~北の流れがみられた。12月の調査も10月と同様の流向がみられたが、潮時が同様であるにもかかわらず流速が著しく遅かった。これはノリ網の張込みによるものか今後の検討を要する。

研究要報11(1958.2)

 

Ⅳ 東京都内湾わかめとその増殖について(第1報)

塩屋・倉田・梶沼・伊藤

 大田区地先海面に近年ワカメが増えて漁業者から積極的増殖を望む声が高まってきたので、30年度以降分布・成長の調査を行うと共に新養殖法を試みた。
 分布と成長:羽田州の水深0.5~2mのアサリ・ハマグリ漁場約1.25万㎡に分布し、殆んどがムラサキイガイに付着している。1956年12月27日の葉長組成は1cm未満に、1957年2月1日で15~20cmにモードがみられたが、3月4日には最大形107cmも得られたがモードは10~20cmにあった。4月1日には30cm以上のものに葉体の切れたものが多く約50%を占めた。
 養殖試験:ノリひび利用による新養殖法を考案して、1955・1956年の2カ年度試験を実施した。宮城県女川産の種苗を11月仮垂下の後、1月9日養殖を開始したところ(1956年)3月22日以降に収穫があり、ノリ養殖の副業としての可能性を認めた。

研究要報11(1958)

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