Ⅰ 大島近海に出現するサンマについて

五十嵐・小西

 波浮港におけるサンマの水揚高(1936~1954)と海況との関係を検討した。
 漁獲高は年変動が甚だしく、豊漁の翌年は凶漁の場合が多い。1949年以降は激減している。初漁日は、水温は20~21℃に現われる場合が多い。

研究要報3(1955.3)

 

Ⅱ 豆南海域におけるサンマ稚魚の分布

倉田・小西・草苅

 三宅島以南におけるサンマの成魚・卵・稚魚を採集して若干の知見を得た。
 成魚の来遊は20℃水帯が八丈島の南に拡がった場合が多く、1948年はこれに当る。卵は御蔵島以南八丈島近海で発見された。楕円形で長径1.87㎜、短径1.65㎜であった。
 稚魚は大島~鳥島間に分布し、とくに八丈島以南に多い。全長6.5~80㎜の範囲で採集された。生息水温は19~20℃である。御蔵島以南の海域で産卵するものと考えられ、産卵は1月より始まり春にかけての1回の産卵期といえよう。

研究要報3(1955.3)

  

Ⅲ 大島におけるイセエビの産卵について

五十嵐・永野

 大島のイセエビの産卵についての観察を行った。
 1953年6月4日刺網で漁獲したエビの測定結果から産卵始期が例年より1旬遅れ、6月上旬と推定された。これは5月上・中旬の水温が例年より1℃低いためと考えられた。
 ♀エビの抱卵と未抱卵では体長に有意差がみられた。
 箱生簀に収容して抱卵期間の観察結果、抱卵日数は約50日で椎名の報告(33~34日)に比し長かった。この原因は収容場所の比重変動の激しさと病気の発生によるものと考えられる。

研究要報3(1955.3)

 

Ⅳ 島嶼水産加工業の現況

古瀬

 島嶼加工業の特質を明らかにするため、各漁協からの報告を基に1949年から1952年の実態を分析した。
 1949年から1952年に漁獲量は2.3倍にまで上昇しているが、加工原料数量は減少している。サバ・トビウオは鮮魚として消費が高く、加工率は低い。アジは、加工率は高いが、漁獲量が多いと処理能力不足により比率が下る。カツオは加工率の高い有利な原料である。
 品目別には、塩乾品は原料総量の64%と過半量を処理された年もあれば28%と低い年もある。主体はアジである。節類は塩乾品と共に加工の主なものでサバは減少しており、ムロ節は漁獲量の変動と共に増減している。冷凍品は原料総量の15~30%で今後増加の可能性が強い。
 支庁管内別に原料処理量をみると大島70~90%で高い比率となっている。三宅・八丈の比率は低い。

研究要報3(1955.3)

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