内湾調査平成30年10月 カイヤドリウミグモと推定される寄生性のウミグモ

内湾調査平成30年10月 カイヤドリウミグモと推定される寄生性のウミグモ

平成30年10月9日の小型底曳網調査では、アサリなどの二枚貝に寄生するカイヤドリウミグモNymphonella tapetisと推定される自由生活期(貝から離脱)の個体が7個体採集されました(写真1、写真2、写真3)。それぞれ細い肢(あし)を広げた最大幅は、約5~16㎜ほどでした。本種は、幼体時に二枚貝に寄生し、尖った口先を軟体部に突き刺して体液を吸って成長します。平成19年に千葉県木更津市の干潟でアサリの大量死が見られましたが、この時に一つの貝に60個体以上の本種の寄生が確認される個体もあるなど、多数の寄生によってアサリが衰弱し、死亡したものと考えられています。
 なお、本種は日本では九州で昭和元年に初めて記録されたものの、その後の採集記録が極めて少ない種類です。平成に入ってからは、元年に北海道内浦湾で自由生活期の雌が1個体、宿主であるアサリからは前述の平成19年の木更津市、平成20年の愛知県三河湾、平成21年の福島県松川浦の3水域から多数の寄生が確認されています。このうち、漁業被害が報告されたのは前述の木更津市のケースだけでした。

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  写真1 標本瓶に収容した生物            写真2 カイヤドリウミグモの形態
  
注)赤丸内はカイヤドリウミグモ                注)矢印は触肢の位置を表す。
                                        
白色プレートの1片は1㎜。 
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  写真3 分類の手がかりとなる触肢部分の拡大

 
◆参考
  ・宮崎勝己・小林 豊・鳥羽光晴・土屋 仁. 2010. アサリに内部寄生し漁業被害を与えるカイヤドリウミグモ
   の生物学.タクサ 日本動物分類学会誌,28, 45-54.
  ・新日本動物図鑑.1973.北隆館、333-338
  ・特集、カイヤドリウミグモ、大発生からの研究の動向. 生物科学,2019.70(2),66-111

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図1  調査地点

  平成30109日内湾水質調査結果
 
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