内湾調査令和元年10月 奇妙なエビ、キシユメエビ・台風のシジミへの影響

内湾調査令和元年10月 奇妙なエビ、キシユメエビ・台風のシジミへの影響

St.4(三枚洲)でカタクチイワシEngraulis japonicus、(写真1)が76尾、サッパSardinella zunasi(写真2)が1尾採れました。St.1(羽田洲)ではシロギスSillago japonica (写真3)1尾とヒメハゼFavonigobius gymnauchen、3尾、St.3(15号地)ではネズッポ科の魚(写真4、属、種は不明)が10尾採れましたが、St.2(羽田洲)とSt.5(お台場)では、魚は全く採れませんでした。

なお、奇妙な形をしたプランクトンであるキシユメエビLucifer hanseni(写真5~7、眼柄の長さと尾の棘から類似の他種と判別可能)がSt.3を中心に全ての地点で採取されました。

また、今月は12日に台風19号により東日本に記録的な大雨がもたらされました。この前後に発生した洪水によるヤマトシジミ漁業への影響が懸念されたので以下に考察しました


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 写真1 カタクチイワシ(全長約7㎝)            写真2 サッパ

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 写真3 シロギス                       写真4 ネズッポ科の魚(格子の一辺は5㎜)

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 写真5 キシユメエビ(白線は5㎜)           写真6 キシユメエビ頭部(矢印は眼柄を指す)


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写真7 キシユメエビ尾部(矢印は外縁部末端の棘を指す)



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図1 調査地点図

荒川におけるヤマトシジミ漁業と洪水の影響

荒川の下流域では、水質が好転した昭和50年頃からヤマトシジミCorbicula japonicaを採捕するシジミ漁業が復活し、平成18年の518トンをピークに、その後200~300トン漁獲しています(図1、図2)。これは、全国の湖沼・河川を合わせた総漁獲量の2~3%に相当し、江戸前の魚介類の中で唯一復活した魚種と言えます(図3)。ところが、シジミ漁業が解禁になった令和元年11月に出漁した漁業者によれば、「軟泥だった川底が所々細かい砂に替わり、これまで1日1隻当たり100~200㎏獲っていたシジミが、漁場の最下端(図1破線部分)わずか50㎏程度しか獲れなかったため漁を止めた」とのことです。この要因は、令和元年10月12日に襲来した台風19号の出水による影響と考えられます。

そこで、洪水がシジミ漁業に及ぼす影響を把握するため、国土交通省HP掲載の水文水質データを用いて、同漁業が本格的に復活した平成7年以降の荒川岩淵水門上流における時刻水位4m以上の出水のケースを調べました(図4)。その結果、7m越えの最大値を示した令和元年10月10日の他には、6m越えの平成11年8月12日、5m越えの平成19年9月4日の2回が確認できましたが、いずれも漁業の中止には至っていません。このことから、荒川におけるシジミ漁業成立の分岐点は、時刻水位6mから7mの間と考えられます。 

なお、過去2回の出水時には、それぞれ前年より漁獲量が低下(図2黒柱)し、漁業が上向くのに数年を要しているようです。出水をある程度抑える環境整備が望まれます。

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図1 荒川のヤマトシジミ漁場               図2 荒川のヤマトシジミ漁獲量と水質 

注)茶色で囲った部分が漁場               (2019年の漁獲量は極めて低水準)

                                 注)汚濁指標BOD値は低いほど水質が良好

                                  

10図4.png10図5.png

図3 荒川のヤマトシジミ漁獲量の全国比     図4 平成7年以降の岩淵水門上流における時刻 

注)全国比(%)=荒川の漁獲量             水位4mを超水量

            /全国の漁獲量×100



内湾水質調査結果 令和元年10月10

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